
木に触れながらモノ作りの楽しさを感じられる場所
スタジオ木工部 下岡蓮 | アフタヌーンティー・ティールーム ルミネ大宮
スタジオ木工部の下岡蓮さんの仕事は、いわゆる大工。店舗に置く棚などの什器や、扉や窓枠などの建具を作る。少しでも寸法が違うと設置できず、修正が必要となって工期スケジュールが乱れるなど大きなトラブルになりかねない。正確さが求められる仕事だ。
「学生時代の美術の授業で、彫刻刀で削ってペーパーナイフとかを作るのが楽しくてこの仕事を選びました。きちんとしたい性格というのもあって、自分が作ったものが収まるべき場所にきちっと収まると、とても気持ちがいいです。dacは設計部が独立してあり、完璧な仕事をしてくれます。そのおかげで大工が図面を引くのに時間を取られることがありません。好きなモノ作りに没頭できる環境です。その図面を基にして完璧に、求められる以上に美しく仕上げることを日々、心掛けています」

設置作業は閉店後になることが多い。だいたいの場合、数日で終わる。しかし、埼玉県にある<アフタヌーンティー·ティールーム ルミネ大宮>の現場は、店舗面積が広くまっさらの状態からのスタートだったため、3ヵ月ほど続いた。夜10時から作業を始め、朝6時頃に帰路につく昼夜逆転の生活を過ごした。
しかも、入社して1年足らずでリーダーとして入った初めての現場だった。任せられた以上、プロとして経験の浅さは言い訳にならない。しかし、プレッシャーは相当なものだった。
「自分がまとめ役だと聞いた時は、率直に言えばマジか…と(笑)。心配で仕方がなかったです。実際に、天井が真っすぐじゃなくて隙間が空いてしまうとか、壁を立てて取り付けなければいけない棚のサイズが合わないだとか、アクシデントの連続でしたね。大変ではありましたが、不測の事態に対してどうしたらいいのか、自分で考える力が付きました」

乗り越えた試練の数だけ強くなり、誇りと自信を持てたのは間違いない。
「すべての作業が終わり全体を見渡した時に、『これを自分たちが作ったんだ!』というものすごい達成感を味わうことができました。営業を始めたお店をちらっと覗きに行ったりもしました。大勢の人が楽しそうに過ごしているのを見て、幸せな気持ちになりました」
入社7年目で、現在は班長として4人のチームをまとめる立場にある。後進の育成はdacに息づく木の伝統を受け継ぐために重要な仕事。後輩の指導にあたる際、意識しているのは、「すべてを教えないこと」だ。
「基本や間違えやすいポイントはきちんと教えますが、あとは自分で考える力を身に付けてほしくて、自由にやらせるようにしています。職人として自分のやり方を自分で見つけてもらいたいんです。もし間違ってしまったとしても、その失敗を次に活かせばいい。そうした自由な空気がdacにはあるので、大工経験がない人でものびのび働けるのでは。興味を持ち自分から動こうとさえすれば大丈夫。これだけ大きな仮組もできるスペースのある工場を持っていることは、大工からすると魅力的な会社です。僕が入社した頃に比べると社全体がだいぶ若返り、現場は若者が主体となってやっています。木に触れながらモノ作りの楽しさを感じやすいのではないかと思います」
下岡蓮 | 2017年入社、スタジオ木工部 所属。スタジオ木工部にて班長として若手の職人たちをまとめる。ベテラン職人と若手をつなぐ存在であり、育成担当でもある。 |


